2011年12月27日火曜日

PowerMEMS2011出張報告

 グリーンセンサ・ネットワークシステム技術開発プロジェクトの関連技術の研究動向を調査するため、国際学会PowerMEMS2011へ参加してきましたので報告いたします。

PowerMEMS2011は、年1回開催の、パワーMEMS分野の国際学会であり、今年は11/16~18の3日間、韓国のソウルでの開催でした。

(1)学会の発表分野
基調講演1件、招待講演4件、口頭発表48件、ポスター発表70件が行われました。
全投稿に対する採択率は90.1%とのことです。
投稿者数の地域別内訳は、アジアが44.3%、ヨーロッパが38.9%、アメリカが16%、アフリカが0.8%となっており、世界中のパワーMEMS分野の研究者が集まり、活発な議論が行われました。

基調講演と招待講演を除いた、口頭発表の内訳は、

 ・環境発電技術…7セッション(28件)
 ・燃料電池等の化学反応応用技術…2セッション(8件)
 ・MEMSタービン等、システム化技術等、熱マネジメント技術等…各1セッション(12件)

となっており、近年の環境発電分野への注目を反映してか、環境発電技術分野に対し、非常に多数の発表が集中しています。

(2)技術調査
 本プロジェクトと関連深い研究分野である、環境発電技術のセッションを中心に聴講してきました。
 全体として、圧電薄膜としてPZTを用いた振動発電技術の発表が多数を占めていましたが、なかなか発電量を増やすことは難しく、非常に研究し甲斐のある技術分野となっていることが伺えました。
そのような中、印象に残った発表が2つあります。
 1つ目は、ドイツのLaboratory for Design of Microsystems, Department of Microsystems Engineering (IMTEK)のPeter Woias教授の発表です。電車の振動で発電して無線送信を行う端末を開発し、実際に線路に設置して無線送信した結果の発表です。発電素子に対する工夫と併せて、蓄電・エネルギーマネジメントするシステム技術を開発することで、発電量が比較的少なくとも、早期に実用化に近づけることができる、という発表内容は、強く印象に残りました。
 2つ目は、京都大学/小寺研究室の方の発表で、振動発電用の圧電薄膜として、鉛を含むPZTに代わり得る材料として、(K,Na)NbO3が提案されました。実際に(K,Na)NbO3を使って振動発電素子を作製し、PZTとほぼ同等の発電性能が得られた、という発表です。これまで、PZTと同等性能を有する代替材料が存在しなかったため、有鉛で環境に対する懸念のあるPZTが広く使われてきた分野ですが、ブレークスルーと成り得る可能性を感じました。

つくば研究センター 藤森

2011年12月22日木曜日

MEMSと低炭素社会の一考察

-最小にして最大の効果を発揮するMEMS-
日本における最適な低炭素社会実現を目指すことを目的した「グリーンセンサ・ネットワークシステム技術開発プロジェクト」が7月にスタートして半年が過ぎました。
東日本大震災の影響で今年ほど電力消費を意識した年は、はじめてと思います。自宅、職場、駅、デパート、商店街、公園等ほとんどの場所が節電モードとなり、不足した電力を補いました。その結果、ものづくりのための生産力も落ちて景気も悪くなりました。最近は節電にも慣れて「適電」(適切な電力使用)なる造語も聞くようになりました。
そのような厳しい現実社会の営みのなかで、車、家電製品、ロボットをはじめ工場、スーパー等において、人間の目・耳・皮膚感覚の役割を担うMEMSセンサーの役割が期待されています。新しいMEMSセンサーの開発は、いろいろな場所や場面に応じてエネルギー消費量を計測し、その計測結果から最適な消費電力を導き家電製品をはじめとする諸設備に、センサーとコンピューターを組み合わせて効率かつ最大限の省エネルギー効果を発揮するシステムを目指しています。おそらく今年節電した分くらいは節電できるのではないかと期待しています。また、最近新聞等で賢い冷蔵庫や洗濯機、お掃除ロボットなどが紹介されている記事が散見されますが、その賢い部分はMEMSセンサーの働きがキーになっています。従って、既にスタートしていますバイオ・ナノテク技術を融合させた次世代型のMEMS製造技術開発プロジェクト(BEANSプロジェクト)やNMEMS技術研究機構の「グリーンセンサ・ネットワークシステム技術開発プロジェクト」(GSNプロジェクト)が成功し、開発製造されたMEMSが、省エネルギー実現に必要な最小にして最大の効果を発揮するはずです。
そして省エネルギー効果は当然少ない発電量で済むわけですから、石油などの化石燃料に頼らない低炭素社会実現に貢献できます。もちろんこれだけで低炭素社会が実現できるわけではなく、政府各府省及び日本のあらゆる研究機関、あらゆる研究者があらゆる方向からの省エネルギーに向けた対策並びに研究開発及び自然エネルギーを活用した発電技術等が成功して成就するものと思っています。
しかし心配がひとつあります。MEMSの力は省エネルギーに貢献すると同時に人間が直接行ってきた部分もMEMSによって自動化され、人間自身への省エネルギーも実現してしまい、この部分を良く考えておかないと、すべてMEMSにお任せ状態では人間の方が堕落してメタボになってしまうのではと心配です。このように新しいMEMSが出現したとき、どこまでMEMSの力に頼ったらいいのか憂慮しています。考えすぎでしょうか!!!??(研究支援部 町田 進)

2011年12月16日金曜日

セブン-イレブン立川地区 サイトビジット

◆前田PL、NEDO久木田部長、小寺PMのセブン-イレブンにおけるスマートセンサによる省エネ実例現地視察
平成23年12月1日に前田プロジェクトリーダ(PL)とNEDO技術開発推進部久木田部長、小寺プログラムマネージャー(PM)、大久保主任研究員、渡辺主査、奥谷主査が、グリーンセンサネットワークシステムの構築と実証実験で参画しているセブン-イレブンのコンビニ店舗(東京都立川地区)の省エネ取り組みについて現地視察された。すでに、本プロジェクトが始まる前から、JST-CRESTの実験サイトとして電力モニタリングによる省エネ実証が行われている。
最初に、立川商工会議所において、セブン-イレブンの省エネの取り組み、続いて立川商工会議所 環境ECO推進協議会の省エネ取り組みについてご説明頂いた。質疑応答のなかで、電力センサに求められることとして、安いセンサであること、設置コストを考えると無線が不可欠、電池交換のメンテナンスコストを考えると自立電源が望ましい等の意見が出た。
その後、セブン‐イレブン・ジャパン立川地区事務所、電力センサを設置したコンビニ店舗を見学された。