2014年11月27日木曜日

CARE INNOVATION 2014


 Going Green CARE INNOVATION 2014(11月17-20日)に参加し、GSNプロジェクトで実施したスマートコンビニの研究成果を発表した。この会議は、1996年のフランクフルトでの開催に始まり、1998年以降、4年に一度ウイーンで開催されている。2000年より4年に一度ベルリンで開催されているELECTRONICS GOES GREENと協同している。どちらの会議ともテーマは“エレクトロニクスと環境”であり、問題解決を目的として産業・政策・科学分野からの多様な発表が特徴である(目的志向)。ただ多数を占めるのは、欧州の社会情勢を反映してか、リサイクル法や化学物質規制などの「環境規制」に関連した技術開発、評価手法およびシステム設計である。

 今回の会議では41か国からの参加があった。初日(17日)には、参加登録と、この会議のchairであるKopacekと座長に関する打ち合わせを行った。18日の午前中は、オープニングで、資源効率・エコイノベーション・循環型社会に関するEU政府からの基調講演が行われた後、「資源効率化経済社会に向けて」と題したパネルディスカッションが実施された。午後から、4つの会場で講演発表(約180件)がスタートした。エネルギー関連の発表は、IT、再生可能エネルギー、およびエネルギー効率の3つのセッションが主体であり、件数は10件を超える程度であり、発表の半数以上は日本からのものであった。他のセッションで、サウジアラビアのYanbuでのスマートシティプロジェクトに関連した発表があったが、政府の広報のような宣伝中心のもの。ITセッションは、NTTからの発表が多く、IT機器のエネルギー消費量や、ITサービスによる社会の省エネ貢献を試算したもの。唯一興味をひかれたのは、東京大学の寄付講座「電力ネットワークイノベーション」からの発表で、気温、湿度等のパラメタを使い都内2900万世帯の家庭の電力消費量を予測する手法の提案であった。この手法は、電力プロファイリング手法の高度化を進める上での参考となる。

 本プロジェクト成果の発表は、“Energy Saving Measures Obtained from Large-Scale Power Monitoring Experiments in Convenience Stores”のタイトルで19日の午前中に行った。スマートコンビニに課せられた3つのミッション、「無線センサを活用した見える化による省エネ」、「省エネに資するグリーンセンサネットワークの仕様」および「省エネ・無線センサの社会普及の課題」に対する成果を25分間の中で発表した。あまりにスケールが大きくインパクトが強かったためか(あくまで私見)、質問は「見える化がすぐ省エネに結びつくのか」といった申し訳程度のものしかなかった。
 前日の18日の夕方「デザイン」のセッションの座長を行ったが、発表者の名前が発音できずに、ローマ字で書いてもらって、たどたどしく発音をするという、“ていたらく”。「発表者にバカにされる座長」、これは新しい姿かもしれない・・・・

今回のCARE全体の感想を。リサイクル関連の発表が多いのは今回も変わっていない。ただ、日本国内で10年以上前に議論し研究開発した内容と似ているなという、“デジャビュ”を感じた。研究は繰り返されるということであろうか。なぜ、ヨーロッパで開催されるCAREやERECTRONICS GOES GREENで省エネ(電力)の発表が少ないのか?一因として、欧州では、そもそも生活の中で電気をそれほど多く消費していない、あるいは電力消費を意識しないという「社会文化の差異」があるのかもしれない。写真は、ウイーンで一番の繁華街ケルストナー通りの夜景(夕方)である。日本では銀座に当たる街のこの暗さ・・・電力モニタリングのニーズは、国によって大きく異なる可能性があることを再認識した。

 会場は、シェーンブルン宮殿の敷地の一画にある会議場。ウイーンの中心、シュテファン教会や国立歌劇場から地下鉄で10分ほど。ウイーン国際空港からでも30分足らずで行け利便性は非常に高かった。

 ウイーンの名物料理の一つに、シュニッツェル(写真:フォグミュラー)がある。年齢のせいか、回を重ねる毎に完食が難しくなっている。帰国前夜、国立歌劇場で、R.シュトラウスの有名なオペラ「バラの騎士」を鑑賞した。開演前に、ドイツ語と英語に続いて、日本語で「撮影・録音禁止」の注意が放送され、驚愕。確かに観客の中に日本人が多い。日本人にはオペラが好きなのであろうか?演目は3時間を超え、会議と同様に忍耐を強いられた。これも修行である。

 ヘルシンキ経由で帰国したが、ヘルシンキ空港で、搭乗を間
違えてしまった。フィンランド航空で、17:20分発の東京行きと、17:25分発のJALとの共同運航の東京行きがあった(紛らわしい)。17:20分発に乗ろうとして、入り口で注意された(チケットも同じデザイン)。仮に、本来搭乗する便が早目の出発であったなら、搭乗できなかったかもしれない。当日は雪の影響で、機内で2時間程度、離陸まで待たされた。理由は、滑走路ではなく"機体"の除雪。車の洗浄機のようなものを想像していたが、消防車のようなも?ので、放水し除雪していた。機内では、「左手にオーロラが見えます」というアナウンスを夢の中で聞いた。


 (つくばセンター 藤本)

会場のシェーンブルン宮殿

夕方のケルストナー通り

ウイーン国立歌劇場
シュニッツェルとポテトサラダ

2014年11月17日月曜日

IEEE sensors 2014 に参加


 スペインのバレンシアで開かれた IEEE sensors 2014 に参加し、動向調査および口頭ポスター発表等討議を通じて成果普及に努めた。当会議は、センサに関するすべて(材料加工法、デバイス、システム)の国際会議である。MEMS系以外の比較的大きなセンサも対象としており、参加者も通常のMEMS会議に比べて数百名を大きく超える、相当に大規模な会議である。大きな会議であるために6つのパラレルセッションとなっており、聴講したい講演時間がバッティングすることが多いのが欠点である。

  キーノート講演はMITのSenceable CityラボのRatti教授、デルフト大学のZant教授、奈良先端科学技術大学の太田教授の3件であった。Ratti教授の講演はいわゆるビッグデータのスマートシティへの適用についての研究の紹介である。大変ホットな話題ではあったが、研究というよりもさまざまなビッグデータ活用事例が立て続けに紹介されたために技術的なポイントが聴衆には理解されにくい印象であった。Zant教授の講演はグラフェンのセンサ技術への応用についてであり、将来の潜在的な応用例が紹介された。何をターゲットとするかについてがこれからの課題である。太田教授の講演は人工網膜に関してであり、今後の期待が大きい技術であるが、そもそも実用化が可能なのかどうかは判断の難しいテーマであろう。

 NEDOセンサネットワークプロジェクトと類似したプロジェクトとして、欧州のスマートシティ用のワイヤレスセンサネットワークの紹介があった。欧州各国が参加しており、特に都市の大気汚染のモニタリングが各国の主要なテーマであった。今後欧州のプロジェクトとは何らかの連携が必要と感じた。大気中センサノードのガスのセンシングが中心であるために、現状は10cm角以上の大きいものであり、製造技術的には見るものが少ないが、数多くの国の、複数の分野の研究者が協力してネットワークづくりに尽力してることが評価される。これらの他にワイヤレスセンサネットワークは複数のセッションで取り扱われており、防災については京都大学が、農業応用についてはスペインやイタリアの研究機関が多数の発表を行っており、今後の発展が期待される。


                                           前田 龍太郎
                                         (2014.11.02~11.06)