2014年12月22日月曜日

グリーンセンサ・ネットワークシステム技術開発プロジェクト最終成果報告会(H27.2.26)開催のご案内


NMEMS技術研究機構及び(独)新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)では、共同研究事業 グリーンセンサ・ネットワークシステム技術開発プロジェクト(平成23年度~平成26年度)の最終成果報告会を、平成27年2月26日、国立科学博物館 日本館2階講堂にて開催致します。さらに、報告会終了後にポスターセッション/意見交換会を国立科学博物館 レストラン「ムーセイオン」で開催致します。

 報告会、ポスターセッション/意見交換会は下記の通り開催を予定しております。
なお、詳しいプログラムのご案内は、平成27年1月初旬頃を予定しておりますので、グリーンセンサ・ネットワークシステム技術開発プロジェクトのHP(新着情報欄)をご確認いただきますようお願い申しあげます。http://www.nmems.or.jp/gsnpj/#whatsnew
また、会場の制約により参加申し込みは抽選とさせていただく場合がありますので、ご了承ください。
 
           記

日時    平成27年2月26日(木) 午前10時~19時15分

会場    国立科学博物館 日本館2階講堂及びレストラン「ムーセイオン」

内容   
        1. 成果報告会(10:00~17:30) (参加費無料)

         (1)特別講演:安全・安心・快適な社会に資する統合的センシング技術
     の現状と課題
             特定非営利活動法人ウェアラブル環境情報ネット推進機構
         理事長/東京大学名誉教授  板生 清

         (2)省エネに寄与するグリーンセン・サネットワークシステムの構築
     と実証実験

         (3)小型・低消費電力を実現するグリーンMEMSセンサの開発

         (4)グリーンMEMSセンサ端末・ネットワークシステムを実現する
     共通基盤技術

         2. ポスターセッション/意見交換会(17:45~19:15) (有料)

2014年11月27日木曜日

CARE INNOVATION 2014


 Going Green CARE INNOVATION 2014(11月17-20日)に参加し、GSNプロジェクトで実施したスマートコンビニの研究成果を発表した。この会議は、1996年のフランクフルトでの開催に始まり、1998年以降、4年に一度ウイーンで開催されている。2000年より4年に一度ベルリンで開催されているELECTRONICS GOES GREENと協同している。どちらの会議ともテーマは“エレクトロニクスと環境”であり、問題解決を目的として産業・政策・科学分野からの多様な発表が特徴である(目的志向)。ただ多数を占めるのは、欧州の社会情勢を反映してか、リサイクル法や化学物質規制などの「環境規制」に関連した技術開発、評価手法およびシステム設計である。

 今回の会議では41か国からの参加があった。初日(17日)には、参加登録と、この会議のchairであるKopacekと座長に関する打ち合わせを行った。18日の午前中は、オープニングで、資源効率・エコイノベーション・循環型社会に関するEU政府からの基調講演が行われた後、「資源効率化経済社会に向けて」と題したパネルディスカッションが実施された。午後から、4つの会場で講演発表(約180件)がスタートした。エネルギー関連の発表は、IT、再生可能エネルギー、およびエネルギー効率の3つのセッションが主体であり、件数は10件を超える程度であり、発表の半数以上は日本からのものであった。他のセッションで、サウジアラビアのYanbuでのスマートシティプロジェクトに関連した発表があったが、政府の広報のような宣伝中心のもの。ITセッションは、NTTからの発表が多く、IT機器のエネルギー消費量や、ITサービスによる社会の省エネ貢献を試算したもの。唯一興味をひかれたのは、東京大学の寄付講座「電力ネットワークイノベーション」からの発表で、気温、湿度等のパラメタを使い都内2900万世帯の家庭の電力消費量を予測する手法の提案であった。この手法は、電力プロファイリング手法の高度化を進める上での参考となる。

 本プロジェクト成果の発表は、“Energy Saving Measures Obtained from Large-Scale Power Monitoring Experiments in Convenience Stores”のタイトルで19日の午前中に行った。スマートコンビニに課せられた3つのミッション、「無線センサを活用した見える化による省エネ」、「省エネに資するグリーンセンサネットワークの仕様」および「省エネ・無線センサの社会普及の課題」に対する成果を25分間の中で発表した。あまりにスケールが大きくインパクトが強かったためか(あくまで私見)、質問は「見える化がすぐ省エネに結びつくのか」といった申し訳程度のものしかなかった。
 前日の18日の夕方「デザイン」のセッションの座長を行ったが、発表者の名前が発音できずに、ローマ字で書いてもらって、たどたどしく発音をするという、“ていたらく”。「発表者にバカにされる座長」、これは新しい姿かもしれない・・・・

今回のCARE全体の感想を。リサイクル関連の発表が多いのは今回も変わっていない。ただ、日本国内で10年以上前に議論し研究開発した内容と似ているなという、“デジャビュ”を感じた。研究は繰り返されるということであろうか。なぜ、ヨーロッパで開催されるCAREやERECTRONICS GOES GREENで省エネ(電力)の発表が少ないのか?一因として、欧州では、そもそも生活の中で電気をそれほど多く消費していない、あるいは電力消費を意識しないという「社会文化の差異」があるのかもしれない。写真は、ウイーンで一番の繁華街ケルストナー通りの夜景(夕方)である。日本では銀座に当たる街のこの暗さ・・・電力モニタリングのニーズは、国によって大きく異なる可能性があることを再認識した。

 会場は、シェーンブルン宮殿の敷地の一画にある会議場。ウイーンの中心、シュテファン教会や国立歌劇場から地下鉄で10分ほど。ウイーン国際空港からでも30分足らずで行け利便性は非常に高かった。

 ウイーンの名物料理の一つに、シュニッツェル(写真:フォグミュラー)がある。年齢のせいか、回を重ねる毎に完食が難しくなっている。帰国前夜、国立歌劇場で、R.シュトラウスの有名なオペラ「バラの騎士」を鑑賞した。開演前に、ドイツ語と英語に続いて、日本語で「撮影・録音禁止」の注意が放送され、驚愕。確かに観客の中に日本人が多い。日本人にはオペラが好きなのであろうか?演目は3時間を超え、会議と同様に忍耐を強いられた。これも修行である。

 ヘルシンキ経由で帰国したが、ヘルシンキ空港で、搭乗を間
違えてしまった。フィンランド航空で、17:20分発の東京行きと、17:25分発のJALとの共同運航の東京行きがあった(紛らわしい)。17:20分発に乗ろうとして、入り口で注意された(チケットも同じデザイン)。仮に、本来搭乗する便が早目の出発であったなら、搭乗できなかったかもしれない。当日は雪の影響で、機内で2時間程度、離陸まで待たされた。理由は、滑走路ではなく"機体"の除雪。車の洗浄機のようなものを想像していたが、消防車のようなも?ので、放水し除雪していた。機内では、「左手にオーロラが見えます」というアナウンスを夢の中で聞いた。


 (つくばセンター 藤本)

会場のシェーンブルン宮殿

夕方のケルストナー通り

ウイーン国立歌劇場
シュニッツェルとポテトサラダ

2014年11月17日月曜日

IEEE sensors 2014 に参加


 スペインのバレンシアで開かれた IEEE sensors 2014 に参加し、動向調査および口頭ポスター発表等討議を通じて成果普及に努めた。当会議は、センサに関するすべて(材料加工法、デバイス、システム)の国際会議である。MEMS系以外の比較的大きなセンサも対象としており、参加者も通常のMEMS会議に比べて数百名を大きく超える、相当に大規模な会議である。大きな会議であるために6つのパラレルセッションとなっており、聴講したい講演時間がバッティングすることが多いのが欠点である。

  キーノート講演はMITのSenceable CityラボのRatti教授、デルフト大学のZant教授、奈良先端科学技術大学の太田教授の3件であった。Ratti教授の講演はいわゆるビッグデータのスマートシティへの適用についての研究の紹介である。大変ホットな話題ではあったが、研究というよりもさまざまなビッグデータ活用事例が立て続けに紹介されたために技術的なポイントが聴衆には理解されにくい印象であった。Zant教授の講演はグラフェンのセンサ技術への応用についてであり、将来の潜在的な応用例が紹介された。何をターゲットとするかについてがこれからの課題である。太田教授の講演は人工網膜に関してであり、今後の期待が大きい技術であるが、そもそも実用化が可能なのかどうかは判断の難しいテーマであろう。

 NEDOセンサネットワークプロジェクトと類似したプロジェクトとして、欧州のスマートシティ用のワイヤレスセンサネットワークの紹介があった。欧州各国が参加しており、特に都市の大気汚染のモニタリングが各国の主要なテーマであった。今後欧州のプロジェクトとは何らかの連携が必要と感じた。大気中センサノードのガスのセンシングが中心であるために、現状は10cm角以上の大きいものであり、製造技術的には見るものが少ないが、数多くの国の、複数の分野の研究者が協力してネットワークづくりに尽力してることが評価される。これらの他にワイヤレスセンサネットワークは複数のセッションで取り扱われており、防災については京都大学が、農業応用についてはスペインやイタリアの研究機関が多数の発表を行っており、今後の発展が期待される。


                                           前田 龍太郎
                                         (2014.11.02~11.06)
                                                                         
                 

2014年7月14日月曜日

JCK2014

Japan-China-Korea MEMS/NEMS SeminarはグリーンイノベーションおよびライフイノベーションのためのMEMS/NEMS分野の日中韓3カ国の研究者および政府関係者が一堂に会したジョイントセミナーである。
これまでは2010年に第1回(札幌、日本)、2011年に第2回(Jeju、韓国)、2012年に第3回(上海、中国)、2013年に第4回(仙台、日本)が開催された。
第5回、今年の会議は、ソウル市内に位置する、大韓民国を代表する大型のコンベンション・センター「コエックス」にて開催された。学会で発表された研究テーマは、全体で50テーマあり、うち23テーマが口頭発表を行った。

 自身は、グリーンセンサ・ネットワークシステム技術開発プロジェクトにおいて、Flexible Wireless Sensor Nodes for Application in ‘Green’ Sensor Networksというタイトルで、講演を行った。そこでのディスカッションは様々な意見や知見を得られる非常に有益なものであり、今後のプロジェクト推進に対し、非常に役立つ情報が得られた。
Photo of the conference
Photo of the budget




























つくば研究センター 魯 健 

2014年7月2日水曜日

ECTC2014 出張報告(森川)

ECTCはIEEE主催の世界で最大規模の実装技術中心の国際学会である。H25年度に上げたディープエッチングの技術成果の発表と、H26年度NMEMSセンサ実証の為の不可欠なドライエッチング技術についての最新技術情報の収集を行った。

初日はチュートリアルを受講。講師はITRIのJohn Lau氏による3D-IC実装とシリコンインテグレーションについて、最新のレクチャーを受けた。講義ではNEMSMで進めている機能付きシリコンインターポーザの様な、半導体技術を基軸としたSiインターポーザ技術や、樹脂を用いたインターポーザ技術の躍進についても触れられた。インターポーザは現時点、コストが大きな課題である点を説明。NMEMSの場合、さらに微細キャパシタを内臓する為、シンプルなインターポーザと比べるとコストアップとなる。従って新たな工程や材料、或いは成膜技術やドライエッチング技術の開発等で、如何に製造コストを下げるかが非常に重要な課題になることが予想でき、大変有意義な講演であった。

今回グループ(アルバック拠点)から2件の採択を獲得。
5日間での入場者は1170名と多く、実装関連の学会の中では最大級の学会である。

1件目発表はポスター発表で、低コスト化に向けた切り口で、キャパシタ形成における成膜の為のエッチング技術とは何かについて発表。さまざまな分野方面から議論を行えた。TSVエッチング以外にもプラズマダイサーとしての応用にも使えるのではないかといったコメントも多くでた。

2件目発表はノンボッシュのエッチング装置技術について口頭発表。聴講者から、"キャパシタ形成はインターポーザファーストかラストか?これによって温度の影響が違ってくるのでは?"といった的をついた質問も出た。
発表後の休憩時間でのディスカッションで目立ったのは、MEMS関連分野からのコメントで、TSV工程は安くさえできれば今にも採用したといったコメントが多かった。こういった工程のコスト計算専門の企業からもセンサデバイス製造におけるコスト計算をしてみないかと提案をもらう程の反響であった。今回、本NMEMSプロジェクトを通し、低コスト化思想のエッチング開発を行ってこれた点、その開発成果に対して一定の将来性(横展開性)を感じることができた一方、量産工場を意識した工程全体のインテグレーション技術のマネジメントも極めて重要な点も理解できた。

NMEMS技術研究機構、つくば研究センター、分散研 森川 泰宏(アルバック)

2014年6月9日月曜日

ECTC2014出張報告

ECTC2014(64th Electronic Components and Technology Conference)会議は半導体パッケージ技術に関する国際学会研究者が毎年集う世界的な会議である。本会議においてプロジェクトの成果である「3D Integration and Assembly of Wireless Sensor Nodes for Green Sensor Networks」について発表し、その評価を得るとともに広報を行い、あわせて関連情報の収集を行った。

ECTC2014の参加人数は最終的に1170人以上に達し、採択論文数は369件であり(口頭発表セッション: 35; ポスターセッション: 5)、採択率は例年50~60%ほど。

ポスターセッションで、当プロジェクトの成果である「3D Integration and Assembly of Wireless Sensor Nodes for Green Sensor Networks」について発表した。出張者が発表した内、3×3mm集積化センサノ-ドプロトタイプについては集積化技術と開発する低消費電力・低コスト・高集積化発信用RF-LSIの質問を受け、関心が高いことを確認した。本プロジェクトの成果につき海外に対する広報を行うことができた。そこでのディスカッションは今後のプロジェクト推進に対し、有益な情報が得られた。

The photo of the Exhibition Hall

 Photo of my poster in ECTC2014


























つくば研究センター  魯 健



2014年5月19日月曜日

ナノ・マイクロビジネス展でプロジェクトの成果展示およびセミナーを行いました

「ナノ・マイクロビジネス展2014」において本プロジェクトの成果の展示とセミナーを行いました。(主催:(独)新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)/技術研究組合NMEMS技術研究機構)。
 今年度のセミナーでは、プロジェクトの成果を報告する他に、特別講演として、パナソニックから、「パナソニックのエネマネ」という題目で、HEMSの取り組みを中心にエナジーシステム事業部新事業センター長の磯崎様から、そして、大成建設から、「大成建設のセンサ技術を活用した省エネの取り組み」というタイトルでBEMSの取り組みを中心に環境技術開発室長の小林様からご講演をいただきました。
 また、日本政策投資銀行の企画調査課長の大来様より「センサーを軸とした国際競争力強化の提言」というタイトルでセンサネットワークビジネスのあり方を中心にご講演をいただきました。 センサを用いた省エネの取り組み、そしてビジネスモデルのあり方といった省エネ手法、産業発展に向けた内容であり会場はほぼ満員で関心の高さが伺えました。
 セミナーの後半では、グリーンセンサ・ネットワークプロジェクトの成果として、つくば研究センターの伊藤センター長より、「見えた!グリーンMEMSセンサ端末の姿」と題し、各グリーンセンサ、高感度受信機、およびコンセントレータの開発状況について報告を行い、最後に大岡山研究センターの開発成果について、谷岡センター長より、「出来てきた!ファブリック型自立電源」と題し、有機半導体のナノファイバー化、電源モジュールの試作について報告を行いました。
 また、NMEMSのブースでは、プロジェクト最終年度ということもあり、グリーンセンサ端末が多く展示されており、各テーマのパネル・展示物を見に来る来訪者も多く、プロジェクト成果の詳細、省エネ手法を議論する場として盛り上がりを見せていました。 特に、中央では赤外アレイセンサを用いた人・温度センサを用いて、簡単に空調省エネができる実証デモを行い大いにもりあがりを見せていました。 本プロジェクト最終年度に突入しており、グリーンセンサ端末を用いた省エネ実証のステージに突入していきます。実際のデータ収集等を通じて、メンテナンスフリーの無線MEMSセンサの特徴・省エネ効果等を分かりやすく発信していきたいと思います。 本部 今本 浩史

2014年2月3日月曜日

MEMS2014 出張報告 

MEMS技術に関する世界最大級の国際学会である、MEMS2014に参加してきました。
(2014/1/26~30、 http://www.mems2014.org/ ) 
学会には約750名が参加。投稿数も2012年に続く過去2番目と、非常に活気のある学会でした。

私は、ポスター発表で赤外線センサに関する技術成果を発表。省エネ向け人感センサ向けに最適化された、①サーモパイル式赤外線センサ素子構造設計(S字型)、②低コストと高感度を両立するためのウェハレベル真空封止構造、を中心に発表を行いました。

ポスター発表では、人検知のデモ動画も利用した発表を行うことで、今回の成果を十分に伝えられました。

オムロン株式会社 田中純一 

2014年1月24日金曜日

PowerMEMS2013 出張報告


ロンドンにおいてPowerMEMS国際会議、日英エネルギーハーベスティングがあったので報告する。前者においては全体的な印象として、エネルギーハーベスティングに関する発表が多く、かつて本会議で取り上げられた燃料電池やマイクロエンジン、宇宙での推進デバイス等の発表が激減した。またエネルギーハーベスティングについても、携帯電話用電源に関するものは減り、センサネットワークに関する発表が増えている。このことはエネルギーハーベスティングが携帯用途のmw級の発電には適用が難しいことを示しているのかもしれない。また体内留置型デバイス用のグルコースバイオ燃料電源の開発(グルノーブル大学のチーム)や人工内耳用のピエゾ電源(韓国のKIMM)等のライフ応用も話題のトピックである。全体として圧電、電磁力による振動型発電に関する発表が多かった(約60件のオーラル発表中19件)。
エネルギーハーベスティングの発表が多かったなかで、従来からあるマイクロリアクターやアルコール系の燃料電池の開発も東京理科大学と産総研のチームが継続して発表しており、時流に流されない長期的な地味な研究も評価されている。
POWERMESの会議中に日英エネルギーハーベスティングに関するワークショップが開かれた。これは日英の同課題に関する企業のコンソーシアム同士の意見交換会である。
日英の企業の興味の中心はセンサネットワークの実用化にあるが、応用として通信やセンシングの信頼性に重きを置いているために、ターゲットとする発電量は数百mW程度である。これを達成するとなるとシステム全体が大きくなり、MEMSを必要とするかどうかが疑問となる。筆者はセンサネットワーク関連の開発に関して、話題提供を行った。主たる内容はエネルギーハーベスティングもセンサネットワークにとって重要であるが、センサネットワークシステム(センサや信号処理、通信)の低消費電力化が最も重要であることを指摘した。
滞在中にインペリアルカレッジを訪問した。同校はロンドン内にキャンパスを持ち、欧州の工科系大学ではオランダのアイントホーフェン工科大学とともに常にトップクラスを保っている。国内的にもオックスフォード、ケンブリッジにつぐ有名校である。
今回は同校のMEMSや微細加工を専門とするRichard SYMS教授のグループを訪問した。このグループはもともと光MEMSが専門であったが、現在は主任である同教授が医療用マイクロデバイス、Yeatman教授とHolmes教授がPowerMEMSLusyzin准教授がRF-MEMSを担当している。主任であるSYMS教授によれば医療用デバイスは現場に導入するための様々な制度や慣習を乗り越えることが最も困難で、特に病院のような実際に働く人よりも、官僚的な監督者の多い社会ではイノベーションを進めるのが難しいという意見をいただいた。現在同教授はインペリアルカレッジ内の若手の医師を協力することにより、カテーテル型のがん細胞の検出装置を商業化するところまで来ている。アカデミックワールドに生きる大学教授が自己の研究成果を社会に役立てるレベルまで責任をもって開発を行うという責任感の強さに敬意を表したい。
 物価高なうえに寒い場所、かつ食事があまりおいしくないために12月のロンドンは観光には不向きで面白くなさそうな印象を抱くが、せっかくの機会なのでいくつかの写真をお示しする。
1番目と2番目の写真は学会が開かれた会場のそばにあるSt.James公園の風景である。日本の都会は自然と触れ合える機会が少ないがロンドンでは鳥や小動物と身近に触れ合うことができ、市民の憩いの場所となっている。


写真1

写真2

写真3

 
3番目の写真はとまったホテルのレストランのパンフレットである。日本人も外国語を誤用あるいは誤訳して失笑を買うことがあるが、英国でも似たことがあるという事例である。

 
 

写真4
 
最後の写真は比較的新作のミュージカル”I will Rock You”の会場に貼ってあった写真である。12月のロンドンは15時を過ぎるともう薄暗く、観光に適さないところのように思われるが、長い夜をミュージカルに興じたり、パブでビールをたしなむ大人(筆者はそうではないが)にとっては楽しい季節であるかもしれない。
プロジェクト・リーダー 前田 龍太郎

2014年1月10日金曜日

PowerMEMS 2013 参加報告その3

 国際学会PowerMEMS2013(12/3-6)に参加しました。会議の背景は先の二人が記述済みなので、そちらをご参照ください。
 開催地は英国でした。英国といえば、デヴィッド・ボウイ、アーサー・C・クラーク、カズオ・イシグロとクリストファー・プリーストですが、もちろん文学的探究が目的ではありません。今回は、つくば研究センターで遂行中の圧電デバイス開発に関する成果報告と、最新の技術動向の調査を行うため、本会議に参加しました。
 成果発表について、私は会議3日目に口頭発表を行いました。発表の概要は次の通りです。省エネルギーに資するセンサ網へと応用される、圧電薄膜デバイスのための量産技術の開発を行いました。大口径(200 mm) SOIウェハを用いてユニモルフ圧電振動発電デバイスを試作し、圧電特性を評価しました。双極性パルス分極法による発電量の向上について分析しました。
 以上の発表について、圧電特性の向上のための分極処理における支配的な因子はどれかや、他の因子を検討しているか、などの質問があり、当該技術への関心の高さが確認できました。研究の動機が高まり、また嬉しさを感じました。発表のあとに、このように自分の研究に関心をもって話をしてもらえるのは技術者の喜びと思います。
 会議全体に対する感想について。とくに環境発電素子に関する発表を注意深く聞きましたが、素子自体の改良は落ち着きつつある印象を受けました。電力をどのように貯めて、効率よく使うのか、という回路の研究へ比重が移りつつあるようです。
 また個人的に興味深かった発表として、STMicroelectronics(France)のStephane Monfray氏より、CMOSコンパチな技術で作製する熱-機械-電気変換素子に関する発表がありました。パッケージングまで含めた総コストを低くできることが売りであり、またこの技術戦略は同社の得意なやり方であります。その産業的可能性に興味を引かれましたし、自身の企業の哲学に基づいた研究で格好いいなと感じました。


開催場所The Royal Societyは英国科学の殿堂なので
有名人の写真や肖像画がたくさん掛けてあります
(さてこの方々は誰でしょう?)

口頭発表中の筆者

発表のあとの食事は格別です

つくば研究センター 森脇 政仁